フェアゾーンでタッチされたからアウトだったんじゃないんですか?
なんでセーフになったんでしょう?
審判がセーフって言ったからセーフなんですよ。
ルール通りにやらないとダメでしょ。
この記事はこんな人にオススメ
- 一塁ベースを駆け抜けるプレーについて、ルールを正しく理解できる
- オリンピックのプレーで、なぜセーフだったのか理解できる
- 一塁ベース駆け抜けルールの複雑な適用について学べる
一塁ベース駆け抜けのルール
まず、一塁ベース駆け抜け(オーバーラン)に関する公認野球規則を確認しておきましょう。
5.09(b) 走者アウト
打者は、次の場合、アウトになる。
(中略)
(11)走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに一塁に帰塁しなかった場合。
(中略)二塁へ進もうとする行為を示せば、触球されればアウトになる。
また、(中略)ただちに帰塁しないでダッグアウトまたは自己の守備位置に行こうとした場合も、野手が走者または塁に触球して、アピールすればアウトとなる。
引用元:2021年度版公認野球規則5.09(b)(11)
公認野球規則を整理すると、次のケースではバッターランナーはアウトになります。
一塁駆け抜け後アウトになるケース
一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、
- ただちに一塁に帰塁しなかった場合
- 二塁へ進む行為を示し、触球された場合
- ダッグアウトまたは自己の守備位置に行こうとして野手がアピールした場合
これが一塁ベースを駆け抜けに対する基本ルールです。
裏を返すと、上記に当てはまらなければ一塁ベースを駆け抜けてもセーフです。
オリンピックで一塁ベースを駆け抜けてもセーフだった理由
東京オリンピックの野球準決勝、日本vs韓国の試合で一塁ベースの駆け抜けをめぐってこんなプレーがありました。
プレーの概要
- 1アウト1塁の場面で日本ハムの近藤選手がファーストゴロを打つ
- ボールは2塁へ転送されて、一塁ランナーがフォースアウト
- さらに1塁へ転送されたが、ベースカバーに入ったピッチャーがベースを踏み損ねて1塁はセーフ
- と、ここで1塁を駆け抜けた近藤選手がフェアグラウンドに入った!
- ボールを持っていたピッチャーはベースから離れている近藤選手にタッグした
- 塁審の判定はセーフ
このプレーを見て「なぜ、セーフなんだ?」と思った人も多かったのではないでしょうか?
近藤選手が一塁ベースから離れて、フェアゾーンにいましたからね。
しかし、先ほど確認したルールに照らし合わせると、これはセーフです。
その理由を説明します。
まず、一塁を駆け抜けた後、フェアゾーンいるというだけではアウトになりません。
公認野球規則にはフェアゾーンで触球されたらアウトという文言はないからです。
次に、一塁ベースを駆け抜けた後、近藤選手はただちに一塁へ帰塁していました。
正確には、ただちに一塁へ帰塁していると審判はそう判断したのです。
また、近藤選手は二塁へ行く意思を見せませんでした。(と、審判が判断した)
したがって、一塁を駆け抜けた後、アウトになるケースのどれにも該当しません。
だから、近藤選手は触球されようともセーフだったのです。
ランナーの動きに対する判断は審判に委ねられている
上の説明で「審判が判断した」と書きました。
つまり、ただちに一塁へ帰塁しているとか二塁へ行く意思を見せなかったかは、審判の判断に委ねられています。
審判がただちに帰塁していないと思えば、その通りなのです。
二塁へ行く意思を見せたと言えば、その通りなのです。
だから、審判がセーフと言えば、セーフなのです。
おそらく、審判団も近藤選手が二塁へ向かう意思があったかどうかを確認したんだと思います。
結果は、塁審の判定通りセーフでした。
一塁ベースはファウル側へ駆け抜けろと教えられる理由
野球経験者なら、ほぼ全員がこう教えられていると思います。
「一塁はファウルゾーンに駆け抜けろ!」
と。
フェアゾーンに駆け抜けてもアウトにならないのに、なんでこんな指導されたんでしょう?
これは、バッターランナーが二塁へ行く意思があると誤解される可能性があるからだと推測します。
基本的には、二塁へ向かわない限りフェアゾーンに出ることないですからね。
例外は、野手との接触を避けるためにフェアゾーン側にバッターランナーが避けた場合です。
これなら、二塁へ行く意思がないのにフェアゾーンに出ても合理的な説明ができますよね。
したがって、原則としてファウルゾーンに駆け抜ける方が無難なんです。
一塁ベース駆け抜け後のプレーはタイムプレイ
一塁ベースを駆け抜けに関する基本ルールの説明は終わりました。
ここで、少しややこしい話をします。
もし、こういうプレーが起きたらどうなると思いますか?
得点は認められるでしょうか?それとも認められないでしょうか?
例題:プレーの概要
- 2アウトランナー3塁の場面で、バッターはボテボテの内野ゴロを打った
- 間一髪、バッターが一塁ベースを駆け抜けるのが早く、一塁はセーフとなった
- 3塁ランナーは、この間にホームベースを踏んだ
- ところが、一塁手が送球を後ろにそらしたと勘違いしたバッターランナーが二塁へ行こうとした
- 野手はこれに気づき、バッターランナーにタッグして3アウトになりチェンジとなった
正解は、得点は認められて1点入り、チェンジとなります。
なぜなら、バッターランナーが一塁へ達しているからです。
バッターランナーが一塁へ達した後は、第3アウトになる前の得点は認められます。
このことは、公認野球規則5.08(a)で規定されています。
このケースで得点を阻止するためには、3塁ランナーがホームベースを踏む前にバッターランナーをアウトにする必要があります。
すなわち、このケースはタイムプレイになるのです。
タイムプレイについては、この記事で解説しています。
5.08(a)に規定されているという得点が認められないケースもここにまとめています。
参考にしてください。
野球のタイムプレイとはどんなルールか?ルールの基本を説明します!!
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一塁ベース駆け抜けのルール まとめ
では、一塁ベースを駆け抜けた際のルールについてまとめておきます。
一塁ベース駆け抜けルールまとめ
- 一塁ベースはフェアゾーン、ファウルゾーンのどちらに駆け抜けてもよい
- 一塁を駆け抜けた後、ただちに帰塁しない、二塁へ行こうとしたなどの場合に触球されるとアウトになる
- その判断は、審判の主観に委ねられている
- 一塁へ駆け抜けた後触球されてアウトになる前の得点は認められる
一塁ベースを駆け抜けるプレーに関しては、走者のルール、野手のアピール、そしてタイムプレイのルールが絡んでいます。
思っていたより多くのルールが関係しているんですね。
そのあたりのことは、公認野球規則でも確認をしておいてください。